給与ファクタリング

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「給与ファクタリング」についての解説です。

 貸金業法上、同法における「貸金業」に当たる場合、内閣総理大臣または都道府県知事から貸金業者としての登録を受けなければならず、登録をせずに貸金業を営んだ場合には、「10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれを併科」の罰則が課せられます(貸金業法47条2号、11条1項、3条1項)。

 そして、貸金業法における「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(同法では、総称して、「貸付け」と定義されています。)を業として行う者のことをいいます(貸金業法2条1項)。

 給与ファクタリングとは、給料ファクタリング業者が、労働者である顧客から、使用者に対する賃金債権の一部または全部を、額面額から一定程度割り引いた額で譲り受け、差引額の金銭を顧客に交付するというものです。

 この点、賃金は、労働基準法241項で「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定されています。そのため、譲渡され債権を持つはずの給与ファクタリング業者は直接、顧客の勤務先に取り立てることができません。

 すなわち、給与ファクタリング業者は顧客である労働者に譲り受けた債権と同額の金銭を支払わせることになり、事実上、給与ファクタリング業者は顧客に金銭を貸し付けたことになります。

 この給与ファクタリングについては、東京地方裁判所令和2年3月24日判決(判例時報247号47頁)等の下級審では、事実上、貸し付けにあたるとして、貸金業法に抵触するとの判断がありました。

 今回は、給与ファクタリングが、貸金業法及び出資法上の「貸付け」にあたるかについて、最高裁判所が判断をしました。これにより、給与ファクタリングに貸金業法が適用されることについて、終止符を打たれたことになります。

 最高裁判所令和5年2月20日決定では、貸金業法の適用について、以下のとおり、判断しています。

「被告人が、『給料ファクタリング』と称して、顧客との間で行っていた取引(以下『本件取引』という。)は、被告人が、労働者である顧客から、その使用者に対する賃金債権の一部を、額面額から4割程度割り引いた額で譲り受け、同額の金銭を顧客に交付するというものであった。本件取引では、契約上、使用者の不払の危険は被告人が負担するとされていたが、希望する顧客は譲渡した賃金債権を買戻し日に額面額で買い戻すことができること、被告人が、使用者に対する債権譲渡通知の委任を受けてその内容と時期を決定すること、顧客が買戻しを希望しない場合には使用者に債権譲渡通知をするが、顧客が希望する場合には買戻し日まで債権譲渡通知を留保することが定められていた。そして、全ての顧客との間で、買戻し日が定められ、債権譲渡通知が留保されていた。

...。

4 そこで検討すると、本件取引で譲渡されたのは賃金債権であるところ、労働基準法24条1項の趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同項が適用され、使用者は直接労働者に対して賃金を支払わなければならず、その賃金債権の譲受人は、自ら使用者に対してその支払を求めることは許されない(最高裁昭和40年(オ)第527号同43年3月12日第三小法廷判決・民集22巻3号562頁参照)ことから、被告人は、実際には、債権を買い戻させることなどにより顧客から資金を回収するほかなかったものと認められる。

 また、顧客は、賃金債権の譲渡を使用者に知られることのないよう、債権譲渡通知の留保を希望していたものであり、使用者に対する債権譲渡通知を避けるため、事実上、自ら債権を買い戻さざるを得なかったものと認められる。

 そうすると、本件取引に基づく金銭の交付は、それが、形式的には、債権譲渡の対価としてされたものであり、また、使用者の不払の危険は被告人が負担するとされていたとしても、実質的には、被告人と顧客の二者間における、返済合意がある金銭の交付と同様の機能を有するものと認められる。

 5 このような事情の下では、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう『貸付け』に当たる。」

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