遺骨は相続財産か

 飯塚市の小島法律事務所から、弁護士による「遺骨は相続財産か」についての解説です。

 相続財産(遺産)とは、死亡した被相続人が生前に有していた一切の権利義務のことをいいます。この権利義務には、預貯金や不動産などのプラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も含まれます。

 この点については、民法上は896条において「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と規定されています。

 では、亡くなった被相続人の「遺骨」そのものは、相続財産に該当するのでしょうか。

 結論から言えば、該当しないと考えられます。なぜなら、遺骨は生前の相続人のなり替わりであるうえ、被相続人の死後に葬儀によって生じますから、厳密にいうと相続開始時である被相続人の死亡時には存在していません。また、遺骨自体が権利義務を生じさせることは通常ないと考えられるからです。(余談ですが、後述する最高裁判決の第1審である地方裁判所は、「遺産は原告がすべて承継取得し、遺骨も同様である」旨述べており、遺骨を相続財産であると考えたと読める部分があります)。

 では、遺骨が相続財産に該当しないとすると、法律上、遺骨は誰に受け継がれることになるのでしょうか。

 この点について、民法897条1項において「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しています。

 そして、最高裁平成1年7月18日判決(最高裁判所第三小法廷昭和63年(オ)第969号 家裁月報41巻10号128頁)は、原審である東京高裁昭和63年4月18日判決(家裁月報41巻10号129頁)をそのまま踏襲しています。東京高裁は、遺骨の所有権について「特段の事情あるいは被相続人・・の指定がない限り慣習に従って祭祀を主宰すべき者とみられる相続人・・に帰属したものというべきである」との判断を行いました。

 この文言からすると、最高裁と高裁は明言をしていないものの、遺骨については 民法897条1項を類推適用することによって解決を図ったものと考えてよいと思います。

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