家庭裁判所調査官の調査

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「家庭裁判所調査官による調査」についての解説です。

 前回の【子の監護者の指定及び子の引き渡しの審判】を読んでいただくと、より分かりやすいと思います。

【家庭裁判所調査官の調査について】

 子の監護者指定等の事件では、家庭裁判所が命じて、家庭裁判所調査官による調査が行われます。

 家庭裁判所調査官の調査事項は、「子の監護状況」、「子の意向(心情)」、「親子交流場面の観察」等が一般的であり、こうした調査を行う際には、必要に応じて、監護親、非監護親、子との面接調査のみならず、家庭訪問による環境調査や、関係機関(幼稚園、保育園、小学校、児童相談所など)等の調査も行います。

 また、子の意思や状況を把握するにあたっては、家庭裁判所調査官がその専門的知見を活用して、子の言語的な表現のみならず、非言語的な表現や子が置かれている状況等について、子の年齢や発達状況といった視点を踏まえて分析し、評価しています。

 子の監護者指定等の事件に関する家庭裁判所調査官の調査は、一般的に、一事件に1回しか行われず、複数回行われることは少ないです。

 ですが、家庭裁判所における家事調停・審判事件は、当事者間の調整等に相当の時間がかかる場合があります。

 そうした事案では、時間の経過とともに、就学、進学や転居など子の生活環境が変化したり、その変化に伴い父親や母親に対する心情や意向も変化したりすることがあります。

 このような当初の調査の後に、子の心情や意向に影響を及ぼす可能性のある事情がある場合は、それらに関する当事者の意見を踏まえ、再度の調査を実施する必要が生じることも考えられます。

【福岡高等裁判所令和元年10月29日決定 『家庭の法と裁判 No.29 2020.12』87頁】

 1つの家事調停・審判事件において、複数回調査が行われ、原審の判断を抗告審で覆した事件として、福岡高等裁判所令和元年10月29日決定をご紹介します。

1 事案の概要

 事案の家族は、父親、母親、長女(別居時小学2年生)及び二女(別居時保育園年長)の4人家族でした。母親の男性関係を原因として、父親が子どもらを連れて、自宅近くの父親側実家に戻り、別居を開始し、別居後は、長女と二女は、父親と父方祖父母と生活をしていました。別居後間もなくして、母親は、別の地域内の母親側実家に転居し、監護者の指定及び子の引き渡しを求める審判の申立てを行いました。

 原審は、家庭裁判所調査官の父親による監護状況に問題は見られませんでしたが、子どもらの心情として、長女が相手方と暮らしたいと発言するなど、母親により強い好意や精神的結びつきを示していることなどの調査結果を踏まえ、母親の申立てを認容する審判を下しました。そして、この審判に対して、父親は、即時抗告を行いました。

2 抗告審の判断のポイント

 抗告審では、原審での審判後に二女が就学するなど、その生活環境に変化があったことなどから、家庭裁判所調査官による調査を複数回実施しています。

 抗告審では、原審で重視していた子どもらの母親により強い好意や精神的結びつきを示している発言については、原審と同様に、子どもらの母親への強い思慕を認めました。ですが、抗告審では、『就学後の子らについて監護者を定めるに当たっては、従前からの安定した環境ないし生活環境を維持することによる利益を十分考慮する必要があり、乳幼児期の主たる監護者であった相手方との親和性を直ちに優先すべきとまではいえない』として、原審ほど重視していません。

 そして、裁判所は、家庭裁判所調査官の調査結果に対して、『二女は小学校に入学するとともに、フットベースチームにも入り、いずれについてもよく適応している。』『母親と宿泊付きの面会交流も安定的に実施されている状況にある。』『長女は、母親との面会交流時には母親が住んでいる地域で母親と暮らしていと繰り返し発言しているが、担任教諭に対しては小学校や友人と離別することへの強い不安を訴えているのであって、相手方への上記発言が長女の相手方への思慕を示す表現であるとしても、本件監護者指定に対する位置づけについては慎重に評価・判断する必要がある。』と、子どもらの心情や現在の生活環境などをより評価しました。

3 抗告審の判断

 以上のポイントを踏まえて、抗告審では、『子らにとっては、現状の生活環境を維持した上で、相手方との面会交流の充実を図ることが最もその利益に適うというべきであるから、子らの転居・転校を伴う相手方への監護者指定と子らの引渡しは相当ではない』として、原審判を取り消して、母親の申立てをいずれも却下しました。

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