親権者指定の無効

飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「親権者指定の無効」についての解説です。

1 協議に基づかず勝手に親権者の欄を記入した離婚届は有効か。

 離婚をする際、夫婦の間に、未成年者の子どもがいる場合、離婚後の親権者を定めることは、離婚の要件となっています(民法819条1項)。

 そのため、離婚の合意は存在するものの、親権者については協議が整っていない場合に、夫婦の一方が、勝手に親権者の欄を記入して提出した離婚届の有効性が問題となります。

 この点、裁判例上、民法第765条2項を根拠に、協議離婚の有効性と親権者指定の有効性は分けて考えています(名古屋高判昭和461129高民24巻4号438頁)。

 したがって、勝手に親権者を記入し、離婚届を提出した場合、親権者の指定は無効ですが、離婚自体は有効となります。

2 対策・対応

(1)離婚届が提出される前

 離婚届を受理する役所は、離婚届の記載要件について形式的に確認するだけですので、受理に際に、夫婦双方に対し、離婚の意思や親権者指定について審査することは行いません。

 そのため、無効な離婚届が受理されることを防ぐ最も簡略な方法としては、「離婚届の不受理制度」があります。

 これは、離婚届が提出される前に、本籍地の役所に対し、離婚届が提出されても受理しないことを届け出ておくものです。

(2)離婚届が提出された後

 上記のとおり、親権者について協議が整っていないにも関わらず、離婚届が提出され、受理された場合には、その離婚届は有効であるため、親権者の有効性については、以下の方法で対応することが考えれます。

①親権者指定無効訴訟+親権者指定の審判(調停)

 離婚届が受理された場合、離婚届に記載された親権者が、戸籍上の親権者となります。そのため、まず、この戸籍を訂正する必要があります。

 この点、戸籍法上、親権者の訂正については、確定判決が必要となります(戸籍法66条、114条、116条1項)。

 そのため、離婚届で指定された親権者に対し、親権者指定の協議が無かった又は協議が調っていないとして、親権者指定協議無効確認の訴えを行います。

 そして、親権者指定が無効であることの確定判決を得て、戸籍が訂正された場合、戸籍上は暫定的に共同親権の状態となります。

 そこで、次に、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、親権者指定の審判(調停)を申し出ることになります。

 もっとも、親権者指定が無効であることの確定判決を得たとしても、親権者の適格性は別問題であることから、親権者指定の審判(調停)で申請者に親権者が指定されるとは限らないことには、注意が必要です。

②親権者変更の審判(調停)

 ①の方法は訴訟を提起しなければならないため、親権者指定の審判(調停)の申出を行うまでに、時間を要する場合があります。

 この点、親権者の判断において、子の監護の継続性が考慮されることから、訴訟が長期化した場合、親権者指定の審判(調停)で、申出者が不利な立場になることがあります。

 そこで、親権者の指定は有効であることを前提に、親権者変更の審判(調停)を申し出る方法もあります。

 もっとも、現在の親権者を追認したとみなされる点については、申出者に不利に働く可能性があるため、その点は注意が必要です。

 いずれの方法を行うにしても、時間が経過すればするほど、非親権者には不利になることから、早急な対応が必要です。

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