同居中に飼育していた犬の帰属と飼育費用

 飯塚市の小島法律事務所より、弁護士による「同居中に飼育していた犬の帰属と飼育費用」についての解説です。

 婚姻中に、犬や猫などのペットを購入するご夫婦も多いかと思います。

 犬や猫などの動物は、民法上、所有権の対象となる「物」であることから(民法85条、86条)、離婚の際、夫婦共有財産の一環として、犬の帰属先を明確にする必要があります。

 もっとも、犬は単なる物ではなく、生き物であることから、生きている間、餌代などの飼育費がかかります。この餌代などの飼育費用について、どのように取り扱うか、問題になります。

 この点について、福岡家庭裁判久留米支部令和2年9月24日判決は、以下事案において、以下のとおり、判断しています。

【事案】

 A(夫)とB(妻)は、同居期間中、B宅で、犬3頭(大型犬2頭、中型犬1頭)を飼っていました。その後、Aは、B宅を出て、別居を開始し、別居後、Bが3頭の犬を飼育し、Aは餌代を負担していました。

 そして、Aは、Bに対して、離婚を請求しています。これに対し、Bは、離婚請求自体を争い、仮に離婚請求が認められる場合には、財産分与として、別居時の夫婦共有財産の清算のほか、犬3頭とをABの持分2分の1ずつの共有とした上で、犬を飼育しつつ経済的な自立を図ることの困難を補填する扶養的財産分与として、犬3頭が生存する限り、毎月、B宅の家賃額に相当する4万5000円ずつが支払われるべきであると主張しています。

 

【判示】

「犬3頭については、積極的な財産的価値があるとは認め難いものの、一種の動産ではあり、広い意味では夫婦共同の財産に当たるから、財産分与の一環としてこれらの帰属等を明確にしておくのが相当である。

 証拠(A)によれば、Aが犬3頭を引き取ることは困難であることが認められるから、事実上、今後もBB宅において飼育し続けざるを得ないものである。しかし、犬3頭の飼育のためには、B宅を確保するため家賃を支払い続ける必要があるほか、3頭分の餌代その他の費用を負担する必要もあるところ、その全額をBに負わせるのは公平を欠くというべきである。

 そこで、Bが主張するように、犬3頭についてはこれをABの共有と定め、民法253条1項によりABが持分に応じて飼育費用を負担するものとしておくのが相当と考えられる。そして、Aは定職があり持家も有しているのに対し、Bはアルバイトなどで稼働してきたもので現在は無職であり、借家住まいであることに照らすと、持分割合は、A2対B1として、同割合で費用を負担するのが実質的な公平にかなうといえる。また、同条項には、同法649条にあるような費用前払に関する規定はないが、犬3頭の飼育費用として、B宅家賃の一部及びAが支払中の餌代が今後も発生し続けることは明らかであるため、その3分の2については人事訴訟法32条2項により、Aに支払を命ずるのが相当である。」

 上記判示からすると、犬3頭については、清算的財産分与において多くの場合に用いられる2分の1ルールを適用するのではなく、飼育費用の負担能力も考慮して、共有としつつも、その持分割合を定め、その持分割合に応じた飼育費用の負担を命じています。

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