物損に関する慰謝料

交通事故において物的損害が発生した場合に、それに関する慰謝料の主張がなされることがありますが、一般的に物損に関する慰謝料は認められないとされています。物損であっても、被害者のその物に対する特別の愛情が侵害されたようなときや、その物損が被害者の精神的平穏を著しく害するような場合は、慰謝料が認められることがあります。

なお、東京地裁平成元年3月24日判決(交民集22巻2号420頁)は、「財産的権利を侵害された場合に慰謝料を請求しうるのには、目的物が被害者にとって特段の愛着をいだかせるようなものである場合や、加害行為が害意を伴うなど相手方に精神的打撃を与えるような仕方でなされた場合など、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存することが必要である」として、メルセデスベンツの車両損害に対する慰謝料請求を前記特段の事情が認められないことを理由に否定しています。

<参考判例>

1 横浜地裁平成18年9月29日判決・自保ジャーナル1707号18頁

物の損傷による損害については、財産的な損害に止まるのが原則であり、本件事故後、A(被害者)は、被害車両をレストア車として完成しているのであって、被害車両に対するAの愛着ということを考慮しても、「身体の損害に相当するような精神的苦痛を被ったものとは認められないから、同原告の慰謝料の請求は認められない」とした。

2 東京地裁平成15年7月28日判決・交民集36巻4号969頁

加害車両が陶芸作家の敷地に突っ込んで、屋外にあった作品を損壊した事案において、破損作品の財産的価値を確定できないとして、物の価格賠償を否定しつつ、慰謝料の算定で斟酌するとしています。

<コメント>

判例1の被害車両は1964年式のフォード2ドアセダンであり、このようなクラシックカーなど、一部の方に評価の高い車や同じ車両を入手しがたいような事情がある車両について、物損の慰謝料が請求されることがあります。もっとも、この裁判例で「身体の損害に相当するような精神的苦痛」を求めていることからも明らかなように、物損の慰謝料は原則として認められないと考えられます。

判例2の事案も事案の特殊性から慰謝料を認めていますが、この裁判例をもって、正面から物損に対する慰謝料が認められたと評価することはできないと考えられます。なお、判例2では、原告は社会的に相当程度評価されている陶芸家ではあり、財産的損害として500万円、慰謝料として500万円の合計1000万円を請求しましたが、裁判所は慰謝料100万円を認めました。

ペットの死亡事故や家に自動車が突っ込んだ事案では慰謝料が認められることが多いですが、ペットの場合、法律上の評価としては「物」ですが、命の問題と考えるのが通常の感覚ですから、ペットの価格相当額の賠償しか認められないと考えるのは困難です。また、家屋の場合は、家が損壊したというよりは、生活の平穏を害されたと評価することができますから、単純な物損の慰謝料事案とは異なります。

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